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home>環境について>環境関連情報>地球温暖化>二酸化炭素排出量増大によるもう一つの環境問題

二酸化炭素排出量増大によるもう一つの環境問題

2020-10-28

~海洋酸性化の影響と今後~

はじめに

2015年に採択されたパリ協定が2020年よりスタートしましたが、相変わらず世界の温室効果ガス排出量は増加傾向にあり(2019年のエネルギー部門の排出量は前年と横ばい)、いつピークを迎えるか見通せない状況にあります。

IPCC(国連の気象変動に関する政府間パネル)第5次報告書では、この温室効果ガス排出量の増加が多くの気象変動を起こすことによって生じる「8つのリスク」の可能性を警告しています。
具体的な現象としては次のものがあります。

(1)高潮や沿岸部の洪水、海面上昇による健康障害や生計崩壊のリスク
(2)大都市部への内水氾濫による人々の健康障害や生計崩壊のリスク
(3)極端な気象現象によるインフラ機能停止
(4)熱波による死亡や疾病増加のリスク
(5)気温上昇や干ばつによる食料不足や食料安全保障の問題
(6)水資源不足と農業生産減少
(7)陸域や淡水の生態系、生物多様性がもたらす、さまざまなサービス損失
(8)同じく海域の生態系、生物多様性への影響

表1 気象変動によって生じる8つのリスク

また、これらの現象によって、以下の問題を引き起こす可能性があるとしました。

(1)暑熱や洪水など異常気象による被害が増加
(2)サンゴ礁や北極の海氷などのシステムに高いリスク、マラリアなど熱帯の感染症の拡大
(3)作物の生産高が地域的に減少する
(4)利用可能な水が減少する
(5)広い範囲で生物多様性の損失が起きる
(6)大規模に氷床が消失し海面水位が上昇
(7)多くの種の絶滅リスク、世界の食糧生産が危険にさらされるリスク

表2 気象変動によって起こる問題

気温上昇が偏西風や貿易風の流れの乱れを招いて各地で異常気象が多発し、海水温上昇が大量の雨雲が供給することで大洪水や強大台風の発生頻度が高くなるということになります。

「高温」「多雨・大雨」によって異常気象が年々増加傾向にあります。

気象庁が2006年から毎年「世界の年ごとの異常気象・主な天候の特徴・気象災害」を資料として公開していますが、2007年と2019年を比較すると、明らかに「高温」「多雨・大雨」が増加しているように見えます(図1・図2)。

特に、2020年5月15日から7月にかけて中国の揚子江流域に降り続いた大雨は、世界最大の三峡ダムの危険水域を越えて、ダムの決壊が危惧される状況まで引き起こしました。この三峡ダムが決壊した場合には上海までも水没し、数億人の犠牲者が出て、さらには東シナ海沿岸に設置された複数の原子力発電所も被災される事態まで引き起こす可能性があることが伝えられました。

天候の特徴気象災害
図1 2007年世界主な天候の特徴・気象災害(出典:気象庁)

天候の特徴気象災害
図2 2019年世界主な天候の特徴・気象災害(出典:気象庁)

温室効果ガスである二酸化炭素排出量の増加が異常気象の増加を引き起こすことは多くの人々が知るところですが、今回は二酸化炭素の増加による「海洋の酸性化」が、もう一つの大きな環境問題として取り上げられるようになってきましたので、海洋酸性化による環境問題について解説したいと思います。

温室効果ガスの増加による海洋酸性化で何が起こるのか

2020年8月19日付け本コラム環境・経済・社会のサステナブルな発展のために~最近話題の「ブルーエコノミー」とは~でも述べたように、古来より日本を始めとして世界中の人が「海の恵み」として多くの海産物やさまざまな資源だけではなく、海上航路による交易などによって利益を受けてきました。

海は大気中の二酸化炭素や熱を吸収する作用があり、気象にも大きな影響を与えています。また、昨年発表されたプラスチックの海洋ごみの増加が一時話題となり、海洋に対する関心が高まっているのかと思われます。

地球温暖化が進んだ結果の熱波や豪雨・洪水といった異常気象は肌で感じることができますが、海面の上昇や海水温の上昇などの海洋での変化は、ゆっくりと進みかつ生活に遠いところで起こる現象のため、我々が直接肌で感じることが少ないと言えます。

しかし、そのような海洋での変化は、やがて我々の社会生活に影響を及ぼすようになると予想されていて、最近話題になり始めた海洋の変化として「海洋の酸性化」があります。

【海水の成分とpH】

海水には多くの塩化ナトリウムが含まれていることは万人の知るところですが、その他に硫酸マグネシウムや、硫酸カルシウムなどの塩類が海水1kg当り35g(35重量%)溶解しています。その他、微量ですが炭酸水素ナトリウム(重曹)や炭酸ナトリウムなどが1kg当り2gほど溶けています。

塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウムなどは水に溶けた場合にほぼ中性ですが、炭酸水素ナトリウムや炭酸ナトリウムは水に溶けるとアルカリ性を示します。このため、トータルすると海水は弱アルカリ性(海表面ではpH8程度、深度1000mではpH7.4)になっています(図3)。

※海面より深海でアルカリ性が弱くなる原因は、水深が深くなるにつれて有機物が分解され、酸素が消費されること、及び、大気中の二酸化炭素が海水に溶け込み海水の循環によって深部に運ばれるためと考えられます。

この海水が弱アルカリ性であることは、アルカリ性の水に溶けにくい炭酸カルシウムを骨格に持つ貝類、サンゴなどにとって好都合な環境となっています。


図3 海水が弱アルカリ性である必然性(出典:筆者が種々資料を参考に作成)

【海水の酸性化進行状況】

2017年11月より日本の気象庁が世界に先駆けて全球の海洋酸性化のデータを収集して公開を始めました。
気象庁は自前の観測船による測定及び国際的な観測データを解析することによって、1990年から2020年までの海洋におけるpH変化をデータとしてまとめました。これを図4及び図5に示します。

この結果、全球平均のpHは、1990年以降約0.05(10年あたり0.018)低下(酸性化)していることが判明しました。

※IPCCによると、「産業革命(1750年代)から現代までに表面海水中のpHは全海洋平均で0.1低下しており、今世紀末までにさらに0.065から0.31低下する」と予測されています(pHの0.1の低下は水素イオン濃度で約26%の増加に相当します)。


図4 全球の表面海水中の水素イオン濃度指数(pH)偏差の長期変化(出典:気象庁)


図5 2018年におけるpH分布図(出典:気象庁)

【海水の酸性化がこのまま進んだ場合】

現在、地球の表面積の約2/3を占める海洋は、二酸化炭素の大気中濃度が増加すると、それを吸収するため、世界規模で海水の酸性化が進みつつあります(図2)。
近年、この海洋酸性化の進行に伴いサンゴや貝類、プランクトン等の海洋生態系にすでに影響が及び始めており、地球温暖化は海のさまざまな生態系、生物多様性に多大な悪影響を及ぼすことが危惧されています。

特に、サンゴ礁は多くの海洋生物にとって住み家であり餌を得る場所でもあり、世界の海に生息する50万種の動物のうち1/4がサンゴ礁域に暮らしていると言われています。また外洋で暮らす魚類が産卵や稚魚を育てる場所でもあります。

このため、サンゴ礁は「海の熱帯雨林」「海のオアシス」などと呼ばれ海洋生態系の重要な役割を担っています(図6)。

あまり知られていませんがサンゴの細胞内には「褐虫藻」と呼ばれる小さな単細胞藻類が共生しており、褐虫藻が光合成によってつくり出した酸素や、炭水化物、たんぱく質などの有機物を栄養として受け取っています。また、サンゴと褐虫藻が作り出す物質がプランクトンなど小さな生物の栄養となっています。

しかし、海水の酸性化が進むと炭酸カルシウムから構成されているサンゴの骨格が形成出来なくなるだけではなく、海水温の上昇も相まって、褐虫藻が死滅するため、サンゴ自身が死滅する可能性が高くなります。

上述したように、サンゴが多くの海洋生物の生態系の中心に位置すると言えます。

さらにサンゴとサンゴ礁の果たすもう一つの重要な役割に海水中に溶解している二酸化炭素の濃度調節に重要な働きをしていると言われ、このバランスが崩れることによっても海洋生物に悪影響を与えることになります。また、「バリアリーフ」と呼ばれるように大洋に浮かぶ島などにとっては、防波堤や波消しの役割を果たしており、サンゴ礁が消失した場合には大きな影響を受けることになります。

さらには、サンゴ・サンゴ礁が有している海中の二酸化炭素濃度調整機能が失われると、海水の酸性化によって二酸化炭素の吸収力が弱まるため、大気中の二酸化炭素濃度増加スピードが加速する結果になると予想されます。


図6 海洋酸性化による影響 (出典:筆者が種々資料より作成)

まとめ

(1)温室効果ガスの大半を占める二酸化炭素は相変わらず増加傾向にあり、減少傾向に転じる気配がなかなか見えてこない。
(2)温室効果ガス排出量の増加に伴う「高温」「多雨・大雨」により、明らかに異常気象が年々増加傾向にある。
(3)温室効果ガス増加による地球環境の変化の多くは陸地における異常気象などであり、身近に感じることが多いのに対し、海洋における二酸化炭素の増加の影響が深刻な方向にあることは余り知られていない。
(4)海水は二酸化炭素を吸収する性質があり、従来アルカリ性である海水は酸性化に傾きつつある。
(5)海洋生物のうち炭酸カルシウム骨格を有する貝類、サンゴなどは海水が酸性になると骨格形成できなくなる。
(6)特にサンゴ、サンゴ礁は多くの海洋生物の住み家、餌場、産卵場所、稚魚の成育場所となっていて、世界の海に暮らす50万種類の生物の1/4がサンゴ礁の恩恵を受けて生活している。またサンゴ礁は海水中の二酸化炭素濃度の調整役、防波堤役なども担っている。
(7)サンゴ・サンゴ礁が死滅・消滅すると、多くの海洋生物が住み家、餌場、産卵場所などを失い、生物多様性が崩壊する危険性が高くなり、海洋の二酸化炭素濃度の調整機能を失う。
(8)このことによって、海洋の二酸化炭素吸収能力が低下し、大気中の二酸化炭素濃度の増加が加速する。
(9)温室効果ガスの排出の多くは企業などの産業活動により生じており、より温室効果ガス排出量削減のための活動が求められる。

引用・参考資料

  • 海洋酸性化の現状と影響 ─ 二酸化炭素排出によるもうひとつの地球環境問題 (EICネット、2020年4月15日)
  • 海洋酸性化 (Wikipedia)
  • 海洋酸性化とは (気象庁)
  • 海洋酸性化は海の多様性にどんな影響を与える? (Gooddo/気象庁、2020年5月15日)
  • 海から貝が消える? 海洋酸性化の危機 (国立環境研究所 地球環境研究センター)
  • 海が酸性化する (東京大学海洋アライアンス)
  • 米ロサンゼルス49度、史上最高 電力使用の抑制呼び掛け (共同通信、2020年9月7日)
  • 「過去最強」級に発達へ…台風10号、あす午後にも奄美・九州接近の恐れ (読売新聞オンライン、2020年9月5日)
  • 環境・経済・社会のサステナブルな発展のために~最近話題の「ブルーエコノミー」とは~ (日本バルブ工業会、2020年8月19日)
  • サンゴ礁の役割 (三菱商事)

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