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home>環境について>環境関連情報>環境経営・戦略・政策>EUにおける環境基本戦略 #2

EUにおける環境基本戦略 #2

2021-02-22

~有害化学物質のない環境に向けた持続可能な化学物質戦略 #1(本文)~

はじめに

2020年10月14日付けで「EU委員会からEU議会、評議会、欧州経済社会評議会、および地域委員会への伝達」として、「有害物質のない環境に向けた持続可能な化学物質戦略“Chemicals Strategy for Sustainability Towards a Toxic-Free Environment”」と題する文書が公開されました。

この「有害物質のない環境に向けた持続可能性のための化学物質戦略(以下「欧州化学物質戦略」という)」の冒頭では、この戦略を「緑とデジタルの移行のための持続可能な化学物質」という表現を使いながら、2050年までに「欧州グリーンディール」(地球温暖化防止、有害化学物質対策に関するEUの基本戦略)を達成するための野心的なアプローチの一環として位置づけています。また同時に「人間がより良い環境の中でより健康に暮らせるように、汚染の原因を除き有害物質のない環境へ移行することを目的にする」と述べています。

今回は、「欧州グリーンディール」を成し遂げるための「欧州化学物質戦略」の概要とそれに基づく欧州委員会の具体的な行動計画について解説します。

この欧州化学物質戦略は「本文(現状の問題点とEU委員会の意思)」及び「附属書(具体的な行動計画)」に分冊されていますので、2回に分け、今回は本文、特にEU委員会の目指す政策について解説します。

欧州化学物質戦略の概要

欧州連合の新しい成長戦略である「欧州グリーンディール」は、EUを2050年までに持続可能な気候中立で循環型経済になる方向に設定しました。

欧州化学戦略の骨子
図1 欧州化学戦略の骨子(出典:欧州委員会資料より筆者がアレンジ)

危険な性質を持つ化学物質は、人の健康と環境に害を及ぼす可能性があります。すべての有害化学物質が同じ懸念を提起するわけではありませんが、特定の化学物質は癌を引き起こし、免疫、呼吸、内分泌、生殖および心臓血管系に影響を及ぼし、ワクチンに反応する人間の回復力と能力を弱め、病気に対する脆弱性を高めます。

<EUの化学物質、化学工業、化学法に関する事実と数字>
a) 2018年の化学薬品の世界売上高は3,347億ユーロ(約42兆円)、欧州は2番目のシェア(全売上高の16.9%)。このシェアは過去20年間で半減しており、2030年までにさらに減少して2位から3位に移動すると予測。
b) 化学製造業はEUで4番目に大きな産業で、約3万社ある。うち95%は中小企業で、直接雇用者は約120万人、間接雇用者は360万人。
c) EUには包括的化学物質規制(REACH)を含め、化学物質規制がすでに約40ある。

「欧州グリーンディール」を達成し、さらに人間の健康と環境保全を成し遂げるには、化学産業とそのバリューチェーンをグリーン移行させるためのイノベーションを強化する必要があり、既存のEU化学物質政策は進化し、有害化学物質がもたらす課題に対してより迅速かつ効果的に対応する必要があります。

人間の健康と環境に慢性的な影響を与える化学物質(懸念物質)を最小限に抑え、可能な限り置き換えることを促進し、最も有害な化学物質を段階的に廃止することが必要です。

無毒の階層–化学物質管理の新しい階層
図2 無毒の階層–化学物質管理の新しい階層
(EU資料を基に筆者が和訳)

欧州化学物質戦略とEU委員会の具体的政策(抜粋)

以下は、EU委員会資料「有害物質のない環境に向けた持続可能な化学物質戦略」を筆者が和訳し抜粋したものです(赤字は筆者が重要と感じた部分)。

(1)安全で持続可能なEU化学物質の革新

a) 安全で持続可能な設計による化学物質の促進
・化学物質に関するEUの安全で持続可能な設計基準を開発する。
・EU全体の安全で持続可能な設計によるサポートネットワークを確立
・安全で持続可能な設計による物質、材料、および製品の開発、商品化、展開、および取り込みを確保
b) 安全な製品と無毒の材料サイクルの達成
・製品中の懸念物質の存在を最小限に抑え再資源化材料も無毒化する
・特にプラスチック製品や繊維製品など安全なリサイクルを増やし、廃棄物の輸出を減らす。
c) 化学物質の生産のグリーン化とデジタル化
・化学産業は汚染が多く、資源とエネルギーを多く消費する産業⇒革新的な工業化を実施
・低炭素で環境への影響が少ない化学および材料の製造プロセスの研究、開発、および展開
・再生可能水素や持続可能な方法で生産されたバイオメタンなどの燃料の利用
・低炭素で環境への影響が少ない化学および材料の製造プロセスの研究、開発、および展開
d) EUの開かれた戦略的自立の強化
・化学産業はバリューチェーンが複雑であり、例えば医薬品製造のための原料、中間体、医薬品有効成分 などがグローバル化しているが、戦略的依存関係を特定し、これらの依存関係を減らす

(2)差し迫った環境と健康の懸念に対処するためのより強力なEUの法的枠組み

a) 消費者、脆弱なグループ、労働者を最も有害な化学物質から保護
・消費者(特に子供、妊婦、高齢者などの脆弱なグループ)は、おもちゃや育児用品から食品接触材料、化粧品、家具、繊維に至るまで、製品に含まれる化学物質に広くさらされ、またそれらの化学物質を製造/使用する化学産業従事者が有害化学物質に慢性的に曝露される事を出来る限り排除する。
・消費者対象のREACH規則を化学産業労働者にも拡大適応する。
・消費者対象製品に発癌性、遺伝子変異、生殖系または内分泌系、または持続性および生体蓄積性物質が含まれないことを確認する。
・さらに、消費者製品に関して、免疫系、神経系、呼吸器系に影響を与える化学物質や特定の臓器に有毒な化学物質を一つ一つ規制するのでは無く、包括的な影響評価を行い、[「化学物質グループ」として一括規制する。
・REACHのSVHCのカテゴリーとして内分泌攪乱物質を導入し、法的拘束力の有る規制を提案。
b) 化学物質の複合効果から人と環境を保護
・現在化学物質は単一で有害性を評価しているが、複数の化学物質が混合する事で有害性が発現する可能性が有る。
・水、食品添加物、玩具、食品接触材料、洗剤、化粧品に関する法律など、他の関連する法律の組み合わせ効果を考慮に入れるための規定を導入または強化する。
c) 環境中の化学汚染ゼロに向けて
・CLP規則で新しい危険有害性クラスとして、環境毒性、持続性、移動性、および生体内蓄積基準の制定。
・REACH規則のSVHC(非常に懸念の高い物質)のカテゴリーとして、内分泌かく乱物質、持続性、可動性、毒性、および非常に持続性、非常に可動性の物質を導入する。

・廃棄物処分結果で生じる汚染物質を減じるための施策強化。
・パーフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル物質(PFAS)の原則使用禁止により汚染拡大防止。

※CLP規則とは、2009年1月に発効したEUにおける危険有害化学品の新たな分類、表示、包装に関する規則。

(3)法的枠組みの簡素化と統合

a) 1つの物質、1つの評価
・化学物質の安全性評価は、さまざまな法律の下で、さまざまな関係者によって、さまざまな時点,さまざまなEU機関、科学委員会、専門家グループ、または委員会部門によって実施されている。
・CLP規則下で実施されている単一の「公共活動調整ツール」を使用し、全ての法体系で矛盾を無くす。
・同じ物質が異なる法律や評価方法で異なる結果とならないような一貫性の有る透明性の高い評価の実施(図3)
b) コンプライアンス違反への不寛容アプローチ
・EUで製造された、または欧州市場に投入された全ての化学物質、材料、および製品は、EUの情報、安全性および環境要件に完全に準拠する必要が有るが、市場に出回っている製品に関するアラートの30%が化学物質に関するものであり、その90%がEU域外からのもの。
・REACH規則の下で登録された物質に関して情報要件を1/3しか満たしていない。
・化学物質の製造と市場への投入、および化学物質の放出と廃棄のコンプライアンスを確保するため新しい市場監視規則の実施とREACH規則の実施強化。違反者の登録取り消しなど。

化学物質の安全性評価における透明性

図3 化学物質の安全性評価における透明性(出典:EU委員会)

(4)化学物質に関する包括的な知識ベース

化学物質リスクの未知の領域

図4 化学物質リスクの未知の領域、EEA(EU委員会資料を筆者が和訳)

a) 化学データの可用性の向上
・REACHに基づく登録義務を特定の懸念されるポリマーに拡大する提案を行う。現在ポリマーは登録外。
・温室効果ガスの排出を含む、化学物質の全体的な環境フットプリントに関するREACHの下での情報要件を最適に導入する。
・REACH情報要件を修正して、神経系および免疫系への影響を含む、重大な危険特性を持つ物質の効果的な識別を可能にする。
・REACH情報要件を修正して、量に関係なく、EUで製造または輸入されたすべての発がん性物質を識別できるようにする。
b) 化学科学と政策のインターフェースの強化
・化学物質評価のための動物実験をやめ、生態系でのフィールド評価を行う。

(5)化学物質のグローバルで健全な管理の模範の提示
子供たち、特に低中所得国にとって、尊厳のある生活への権利に対する脅化学汚染は脅威

a) 国際基準の強化
・特に主導的な役割を果たし、既存の国際文書およびEU基準の実施を世界的に促進することにより、化学物質の健全な管理に関する2030アジェンダ(SDGs)の目標と目標を達成するために国際的な支持を強化する。
・2020年以降の世界的な生物多様性目標に沿って、化学物質のライフサイクルアプローチを反映するために、2020年以降の化学物質と廃棄物の健全な管理のための世界的な戦略目標と目標の採用に努めます。
・化学品の危険性を特定し、それらをオペレーター、労働者、消費者に伝達する手段として、化学品の分類および表示に関する世界調和システム(UN GHS)の実施を業界とともに促進する。
・国連GHSに基準/ハザードクラスを導入、適応、または明確化することを提案する。
・共通の基準と革新的なリスク評価ツールの開発を国際的に、特にOECDとともに促進し、国際的な枠組みの下でそれらの使用を促進し、とりわけ動物実験からさらにシフトする。
b) 第三国との協力
・アフリカとの協力、近隣諸国や他のパートナーとの協力など、二国間、地域、多国間フォーラムでの国際協力とパートナーシップを通じて化学物質の健全な管理を促進し、化学物質を健全な方法で評価および管理する能力を支援する。
・模範を示し、国際的な公約に沿って、欧州連合で禁止されている有害化学物質が輸出用に生産されないようにします。これには、必要に応じて関連する法律を改正することも含まれます。
・持続可能なコーポレートガバナンスに関する今後のイニシアチブ内で、化学物質の生産と使用に関するデューデリジェンスを促進します。

まとめ

欧州化学物質戦略では結論として以下のように結んでいます。
(1)この戦略は、化学物質の社会的価値を人間の健康や地球の境界と調和させるだけでなく、安全で持続可能な化学物質の生産において業界を支援する機会でもあります。また、有害化学物質からの高レベルの保護に対するEU市民の正当な願望に応え、安全で持続可能な化学物質の生産と使用における世界的なフロントランナーとしてEU産業を促進する機会でもあります。
(2)この戦略は、「ヨーロッパのゼロ汚染」の野心と、生物多様性と農場からフォーク(食卓)への戦略で定義された関連目標に向けた必要な第一歩を表しており、次のゼロ汚染行動計画の基礎を築き、ヨーロッパの癌を打ち負かす計画の成功に貢献しています。この戦略はまた、欧州の産業戦略、欧州の復興計画、循環経済行動計画、および医薬品戦略、水素戦略、電池イニシアチブなどの他の欧州グリーンディール戦略およびイニシアチブを補完するものです。
(3)この戦略で発表された新しい立法イニシアチブは、委員会のより優れた規制ツールによって支えられます。この戦略の目的を達成することに限定された、可能な限り最も的を絞った方法でのREACH規則の改訂を含む法的提案は、公の協議に基づいて行われ、中小企業(SME)がどのように影響を受け、イノベーションが促進または阻害されるかについての分析を含む包括的な影響評価の対象となります。

以下は、筆者によるまとめと備考です。
(1)化学物質は我々人類にとって有用なモノが多いが、人や生物の健康や環境を害するものもあり、持続可能な経済へ転換するためには、有害化学物質のない環境を作る必要がある。
(2)EUではREACH規則を軸に有害化学物質規制を行ってきたが、種々の問題があり、これらを是正、適用範囲の拡大、運用の厳格化、他の規制との整合化などを進める。
(3)今回解説した本文のほか、具体的なEU委員会の行動計画が附属書として付されているので、次回紹介したい。
(4)本コラムを執筆中に化学物質国際ネットワーク(環境省)に本文及び附属書の全文和訳がWeb上で公開されました。より詳細を知りたい場合は以下「引用・参考資料」にリンクを記載しましたので、ご利用下さい。

引用・参考資料

  • COMMUNICATION FROM THE COMMISSION TO THE EUROPEAN PARLIAMENT, THE COUNCIL, THE EUROPEAN ECONOMIC AND SOCIAL COMMITTEE AND THE COMMITTEE OF THE REGIONS  (EU委員会、2020年10月14日)
  • 同上の附属書 (EU委員会、2020年10月14日)
  • A European Green Deal (EU委員会、2019年12月11日)
  • REPORT FROM THE COMMISSION TO THE EUROPEAN PARLIAMENT, THE COUNCIL, THE EUROPEAN ECONOMIC AND SOCIAL COMMITTEE AND THE COMMITTEE OF THE REGIONS (EU委員会)
  • 欧州グリーンディール (仮訳) (公益財団法人地球環境戦略研究機関)
  • EU 無毒な環境に向けた持続可能性のための化学物質戦略の公表を受けて (東京環境経営研究所、2020年11月24日)
  • 有害物質のない環境に向けた持続可能な化学物質戦略/本文(環境省仮訳) (環境省/化学物質国際対応ネットワーク)
  • 有害物質のない環境に向けた持続可能な化学物質戦略/附属書(環境省仮訳) (環境省/化学物質国際対応ネットワーク)

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