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home>環境について>環境関連情報>環境経営・戦略・政策>ロシアのウクライナ侵攻と環境問題

ロシアのウクライナ侵攻と環境問題

2022-04-18

~ロシア産エネルギー・資源とESG投資~

1. はじめに

2022年2月24日にロシア軍が突如ウクライナに侵攻を始めました。国連の常任理事国であるロシアが総勢20万人とも、30万人とも言われる数の軍隊によって、このような行動に出るとは誰も想像さえしなかったと思います。

企業に対するESG投資、ESG経営が問われる近年において、盛んに企業の「予期せぬ出来事に対する危機対応策」が注目されていますが、気象変動、新型コロナウイルス感染症に続いて戦争が企業経営に多大な影響を与える事態に陥りつつあります。

ロシアは天然ガスや石油などのエネルギーのほかにも、パラジウム、プラチナ、ニッケル、アルミ等の金属、小麦等の農産品の主要産出国として位置づけられ、欧米や日本が深い関係を有していただけに、国も企業もそれなりの覚悟を持った対応が必要になると思われます。

戦争そのものは、多大なCO2や有毒ガスの放出、生態系の破壊、多大な瓦礫など廃棄物の発生、騒音・異臭などすべての環境負荷をもたらします。ましてや生物・化学兵器や核兵器の使用、原発攻撃まで危惧される事態においては、戦争は究極の人為的環境破壊と言えます。

ここに来て、多くのメディアがロシアのウクライナ侵攻による環境問題として、ロシア産エネルギーの利用、脱炭素政策などとESG投資・経営を関連付けて、「企業がESG経営やカーボンニュートラルに対してどこまで本気で取り組んでいるかが問われる時が来た」と報じています。

今回は、各種メディアが報じているロシアのウクライナ侵攻による環境問題と今後のエネルギーや資源問題、ESG経営、脱炭素政策などとの関連についてまとめてみました。

2. 戦争は最大の環境破壊行為

近代戦争が「最悪な人為的環境破壊行為」であることは誰にも異論がないと思われます。

人類が誕生して以来、人間同士の争いが続いてきましたが、原始時代においては石斧や弓矢を用いた争いであり、環境への影響はほとんどなかったと思われます。しかし中世に入り、戦争に火を用いるようになった人間は、焼き打ちにより都市すべてを灰にすることさえ行うようになりました。火薬が使われるようになると大規模な環境破壊が行われるようになり、生物・化学兵器や核兵器などの登場によって、さらなる環境破壊が危惧されるようになりました。これらの非人道的な大量破壊兵器は「生物兵器禁止条約」「化学兵器禁止条約」により使用が禁止されていますが、今回ロシアがこれらの兵器を使用するのではとまで危惧されています。


図1 戦争が引き起こす環境破壊行為(筆者作成)

3. ロシアへの経済制裁とロシア産エネルギー・資源

ロシアの軍事力による一方的な主権国家への侵攻に対して、欧米や日本などの国々や地域は一斉に反発し、かつてない規模の経済制裁行動に踏み切りました。

ロシアの海外における資産凍結、資金の流れの停止などは各国が比較的簡単に行える経済制裁だと思われますが、多くの国々はロシア産のエネルギーや資源に対する依存度が高く、またロシア国内において国家レベルの事業を展開している場合や企業として巨額の投資をしている場合など、簡単には撤退や停止ができない例も多々あるのではと思われます。

たとえば、EUの場合、各種エネルギーの輸入国の割合は図2のとおりで、ロシアの依存度が極めて高いことがわかります。

グラフ, 円グラフ  自動的に生成された説明
グラフ, 円グラフ  自動的に生成された説明
グラフ, 円グラフ  自動的に生成された説明
図2 EUにおけるエネルギー輸入国(出典:EUSTAT、2019年EU統計局のデータを加工)

日本におけるロシアへのエネルギー依存度はLNG・原油ともに1桁ですが、EUは陸続きであることから、ロシアとパイプラインを結ぶなど、依存度が極めて大きいことがわかります(表1)。

表1 ロシアへのエネルギー依存割合

 

LNG 原油 石炭
EU 41.1% 26.9% 46.7%
日本 4.8% 8.3% -

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図3 2019年我が国の原油(上)及び天然ガス(下)の輸入国(出典:資源エネルギー庁)

ロシアのエネルギー輸出によるGDP寄与度は約40%に当たるとされており、この収入の一部がウクライナ侵攻などの軍事費に充当されていると考えられるため、欧米や日本はこの収入源を断つことを狙っていると言えます。

EUにとってはエネルギーのロシア依存からの脱却はかなりの困難に思えますが、EUは、「誰も予想していなかったスピードで、ロシアへの燃料依存を1年以内に3分の2に削減する」とする戦略を打ち出し、さっそくドイツは、ロシアとドイツを結ぶLNGパイプライン「ノード・ストリーム2」の承認手続きを停止しました。

ロシアへのエネルギー依存度が高いEUが、迅速にロシア産エネルギーからの方向転換を決めたことは安全保障上の問題やウクライナ支援のほかに、温室効果ガス削減へ思い切った舵を切るための機会とも取れる覚悟を持った行動とも思えます。

一方、企業もエネルギー関係のエクソンモービル、シェルなどを始めとして、電子機器、輸送機器、建機分野関係、小売り、その他多くの企業が現地施設からの撤退、操業停止、取引停止などロシア離れを加速しています。これは自社の判断もあると思いますが、大株主の機関投資家などからの圧力もあるとも言われています。

しかしながら、日本も参加している、サハリンで行われている石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン1」「サハリン2」など、多くの投資を行ったり、資産や利権を残したりしている場合においてはむずかしい判断が必要ですが、岸田首相は「将来のエネルギーの安全保障として継続」を宣言しました。しかし、ESGポリシーと言う観点からすると、今後欧米からの批判を受ける可能性もあるかと思われます。

4. ロシア・ウクライナ問題とESG投資・経営

2022年3月18日付けWeb版日経ESGに「ウクライナ軍事侵攻、真価問われるESG投資」と題する記事が載っています。

この記事では、「なぜウクライナへの軍事侵攻がESG投資に大きな影響があるのか。端的に言えば、気候変動問題が、人権問題や人道問題と密接に結びついていることを改めて世界に知らせることになったからだ」と冒頭で述べています。理由は「ロシアがウクライナへの軍事侵攻に使う費用の原資の一部は、同国が化石燃料を輸出することによって得られた収益によるものだからだ。現在、ロシアの年間のGDPの約4割が石油・天然ガスを含む炭化水素資源によるものだという」と述べ、やや強引な関連付けと言う気もしますが、気候変動を起こし、多くの一般市民を巻き込こむ戦争も同じ化石燃料ビジネスの結果であり、投資家や企業に向けて「今までの商習慣と同じで良いのか」の問いかけを行い、「気象変動と人権・人道問題が隣り合わせにある」と述べています。

ロシアのウクライナ侵攻に対して企業トップは自社の損得に関係なくESG(環境、社会的責任、企業統治)のポリシーに則った素早い行動が取れたのでしょうか。

元ウクライナ財務大臣ナタリヤ・ヤレスコ氏は「Financial Times」への寄稿において、次のように語っているそうです(以下、上記と同様に2022年3月18日付けWeb版日経ESGに「ウクライナ軍事侵攻、真価問われるESG投資」からの引用で、直接Financial Timesの記事は確認できていません)。

  • 「21年11月のCOP26で企業の取締役や幹部層と機関投資家との議論では、ESGは重要なトピックだったにもかかわらず、ロシアのウクライナ侵攻に関して、全てのCEOがESGポリシーに一貫した、勇気ある行動をとれているわけではない」
  • 「企業の勇気あるESGポリシーとは、収益を損なわない時にだけ有効なのか?」
  • 「(企業の)ステークホルダーは企業の見せかけだけのESGに徐々に疑問を呈し始めている。(中略)これをESGウォッシングと呼ばずに何と呼ぶのか」

この言葉は、企業経営者や機関投資家・金融機関に対する痛烈な批判だと言えます。

2014年にロシアがクリミア半島に侵攻・併合した時点で、国家も投資家や企業も、ロシアとは距離を置くべきであったし、ESG経営としては失敗だったと述べられています。

そして、企業の掲げる「ESG経営」「カーボンニュートラル」は、ESGウォッシング、カーボンニュートラル・ウォッシングと言われないように、「やっている振り」ではなく、あらゆる角度から不確実な危機を想定して、危機に直面した場合にはESGポリシーに沿った素早い対応が行えるように備えることが今回の教訓ではないかと思います。

5. まとめ

(1)近代戦争は最悪の人為的環境破壊行為であることは異論がない。
(2)国連の安全保障理事国でもあるロシアがウクライナに対し突如20万人とも30万人とも言われる軍隊で侵攻するとは誰も予想さえできなかった。
(3)米国を先頭に各国・各地域は、この行為に一斉に反発して、かつてない規模の経済制裁を発動した。
(4)これに関して、多くのメディアはロシア・ウクライナ問題と資源・エネルギー及び環境問題には強い関連性があると述べている。
(5)ロシアと陸続きのEUは天然ガスや原油などの化石エネルギーをロシアに大きく依存している。ロシアのGDPの約40%はこれら化石資源の輸出によるもので、その資金の一部が軍事費に流用されていると推定され、この資金の流れを断つことが重要だが、これは前述のとおり簡単にはいかない。
(6)日本においても、現状の中東一辺倒のエネルギー調達は将来的な不安があり、ロシアとのエネルギー開発が進められている。
(7)このような中で、近年企業や投資家・金融機関が熱心に進めてきた「ESG投資・経営」が揺らいでいる。ロシアがクリミア半島に侵攻した時点でロシア依存は避けるべきであったと、ESG経営の失敗を指摘するメディアもある。
(8)企業の掲げる「ESG経営」「カーボンニュートラル」を「ESGウォッシング」「カーボンニュートラル・ウォッシング」としないために、「やっている振り」ではなく、あらゆる角度から不確実な危機を想定して、そこに直面した場合には「「ESGポリシーに沿った素早い対応」が行えるように、魂の入ったESG経営を目指す必要がある。

引用・参考資料

  • Russia’s invasion of Ukraine must prompt an ESG reckoning (Financial Times、 2022年3月3日)
  • Ukraine war prompts investor rethink of ESG and the defence sector (Financial Times、2022年3月9日)
  • ESG investors accused of ‘failing’ over Russia (Financial Times、2022年3月11日)
  • 脱炭素の犠牲になるウクライナ-日本は脱炭素政策を緊急に見直し安全保障を確保すべきだ- (国際環境経済研究所、2022年2月7日)
  • 脱ロシア依存と脱炭素、絶妙な両立を-米欧は禁輸・サハリン撤退も、エネルギー脆弱国・日本は (Web版日経ESG、2022年3月11日)
  • ウクライナ軍事侵攻、真価問われるESG投資 (Web版日経ESG、2022年3月18日)
  • ロシアによるウクライナ侵攻は、甚大な「環境汚染」との新たな“戦争”も引き起こす (WIRED、2022年3月18日)
  • ウクライナ・ロシア危機で懸念される気候変動対応への影響 (日本総研、2022年3月4日)
  • EU、ロシアへのガス依存脱却計画を発表 一時的に排出量増加も (BBC Web NWS、2022年3月9日)
  • From where do we import energy? (EUROSTAT)

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