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home>環境について>環境関連情報>地球温暖化>2030年温室効果ガス排出量46%削減への道 #1

2030年温室効果ガス排出量46%削減への道 #1

2021-08-17


~二酸化炭素をエネルギーに変換~

1. はじめに

2021年4月22日~23日に米国バイデン大統領が主催した気候サミット2021において、我が国はパリ協定の約束草案としていた2030年温室効果ガス削減目標を26%から46%へと大幅に引き上げました。

本コラムでは過去「2030年度温室効果ガス排出量26%削減への道」シリーズとして温室効果ガス削減技術などを紹介してきましたが、今回より「2030年温室効果ガス排出量46%削減への道」として仕切り直したいと思います。

第1回目は、二酸化炭素(以下本文中では「CO2」と略)をエネルギーに変換するカーボンリサイクル技術の現状について探ってみたいと思います。

 

2. 自然のカーボンリサイクル

温室効果ガスとはCO2の他にもメタン、一酸化二窒素、六フッ化硫黄、フロン類、三フッ化窒素などがありますが、全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)によると、2019年度に我が国において排出された温室効果ガスの91.4%はCO2が占めていると報告しています(図1)。


図1 2019年度、日本における温室効果ガス排出量の割合
(出典:全国地球温暖化防止活動推進センター)

この温室効果ガスのほとんどを占めるCO2は、石炭や石油などをエネルギーとして燃焼させることによって発生しますが、我々人間などの動物が呼吸(酸素を取入れてCO2を排出)することによっても発生します。

これらのCO2は、地上や海中の植物や藻類が吸収し太陽光エネルギーを化学エネルギーに変換し有機物を合成するとともに、酸素を排出します。この反応は光合成として知られています(図2)。


図2 光合成イメージ(筆者作成)

そして、人間一人が呼吸により1年間に排出するCO2は320㎏であり、50年生の杉の木が吸収するCO2約160本分に相当します(図3)。


図3 人間が呼吸により排出するCO2量と植物が吸収するCO2量のバランス
(出典:関東森林管理局のデータを筆者が加工)

恐竜が暴れまわっていた太古の時代から、人間が誕生し、その人間が鉄と蒸気機関を使って産業革命を起こすまでの地球は、人間の活動や自然現象によって排出されるCO2の量より、植物や藻類がCO2を吸収して水と光のエネルギーによる光合成によって蓄える炭素量の方が遥かに多かったため、地球上のCO2量が増加することはありませんでした。
この状態を「自然のカーボンニュートラル」と呼ぶことにします(図4)。


図4 自然のカーボンニュートラルのイメージ(筆者作成)

産業革命以降、人口が急増し産業が栄え、生活の質が向上するとともに、石炭や石油をエネルギーとして使用する量が増大し、さらに悪いことには開発のために森林の木々が大量に伐採されるなど、自然のカーボンニュートラルが崩れ、大気中のCO2濃度が急激に増加し始めました。

その結果、地球の平均気温が上昇し異常気象が頻発する状況が生じ始めています(図5)。


図5 自然のーボンニュートラルの崩壊(筆者作成)

3. 人工光合成の現状

産業革命以前の地球では、人間の活動や自然現象によって排出されたCO2は、植物や藻類の光合成による自然の炭素循環、「地球が本来持っていた修復力」によってバランスを保っていました。

この自然の炭素循環を取り戻すためには、植物や藻類によるCO2の吸収量を増やし、人間の活動によるCO2排出量を減らすしかないことは明白であるといえます(図6)。


図6 自然のカーボンニュートラルを取り戻すために(筆者作成)

今回は、植物や藻類が行っている光合成を人工的に効率良く行う研究が進み、実用化に向けた動きも出てきているようですので、最新の動きについてまとめてみました。

人工光合成の歴史や将来展望について、2013年8月26日付け本コラム「今後のエネルギー問題を考える #3~人工光合成とは、そして可能性は~」で述べた時には、やっと植物と同じ程度の効率で光合成が行えた研究段階でしたが、それから8年が経過し、実用化に向けた動きが加速してきているように思えますので、最近の報道について紹介します。

<ケース1>水とCO2を原料に光エネルギーと触媒を作用させてギ酸をと酸素を生成する(GSアライアンス)

2021年11月17日付けで、@PRESSが「地球温暖化の原因であるCO2をエネルギー資源へと変換! GSアライアンスが有機物を生成する人工光合成に成功」と題する報道を行いました。これによると、「比較的簡単に作れる酸化物と金属錯体を複合化させた独自の触媒を用いて、CO2と水を原料に太陽光など光エネルギーによりギ酸(HCOOH)と酸素を生成した」と述べています。ギ酸は貯蔵や運搬の難しい水素の貯蔵媒体(一時的に液体であるギ酸に変換して、使用する際に水素に戻す)として、利用できるため、有効な技術と言えます。

<ケース2>白金触媒を利用してギ酸を分解して水素を得る(大阪市立大学)

2020年5月12日付けのfabcross/MEITECは「水素を貯蔵できるギ酸から水素を生成するメカニズムを解明―白金微粒子の触媒機構が明らかに 大阪市立大学」と題して、白金触媒を利用してギ酸を水素とCO2に分解して水素を簡単に取り出すことができたと報じました。ギ酸を分解して水素を取り出し反応ではCO2が排出されるため、一見、不合理に思えますが、トータル収支では水から水素と酸素が得られますので、合理的な反応と言えます。


図7 人工光合成によるギ酸の生成とギ酸の分解による水素の生成
(GSアライアンス/大阪市大の記事より筆者作成)

<ケース3>太陽電池で生成した電気エネルギーによってCO2を電解してギ酸を得る(豊田中央研究所)

2021年4月26日付け Web版日本経済新聞では、「人工光合成効率、世界最高の7.2%豊田中研、ギ酸で達成」と題して、「水とCO2を原料に太陽光を利用して有用物質を作り出す『人工光合成』の技術で、エネルギー変換効率を従来の約4.8倍の世界最高水準の7.2%に高めた」と報じました。この技術は水とCO2からギ酸を生成するプロセスは同じですが、水に溶かしたCO2を太陽電池で作った電気により分解してギ酸を生成するもので、GSアライアンスの技術とは異なりますが、水素貯留のためのギ酸を生成する点は同じです。人工光合成は照射した光のエネルギーのうち何%を合成した有用物質のエネルギーに変換できたかが性能の指標になります。実用レベルには10%を越える必要があるとされていますが、あと一歩で実用レベルに達すると言えます。

<ケース4>豊田中研と同ように太陽電池で得た電気エネルギーでCO2を電解してCOを得る(東芝)

2021年3月22日付けで、東芝は「常温環境下において世界最高スピードでCO2を価値ある資源に変換可能なCO2資源化技術を開発」と題する発表を行いました。この中で「封筒サイズの設置面積で年間最大1.0tのCO2を変換可能なCO2電解スタックの開発により、省スペースで脱炭素化に貢献する処理能力を達成」と述べており、これをスケールアップすれば「例えば、1日のCO2排出量200tとなる清掃工場であれば、2000m2(バスケットコート5つ分)程度の設置面積で処理ができると試算できます」としています。これは「CO2を燃料や化学品の原料となる一酸化炭素に電気化学変換するCO2資源化技術」であり、太陽光で作った電力を用いることにより、一種の人工光合成と言える技術と言えます。前述の豊田中研と同ように太陽光を電気エネルギーに変換してCO2を分解する技術であり、生成する有機物が一酸化炭素という点に違いがありますが、GSアライアンスのような直接光エネルギーを用いる方法とは別の方向性と言えるかと思います。


図8 二酸化炭素の電気分解による人工光合成(豊田中研及び東芝の記事から筆者作成)

4. 人工光合成の実用化見通し

植物の光合成におけるエネルギー変換効率は0.2~0.3%と言われていますが、人工光合成における変換効率は年々向上し、実用化レベルと言われる10%直前のところまで来ていると言えます。

植物の光合成と人工光合成のプロセスをそれぞれ図であらわしています。
図9 「光合成」と「人工光合成」の概念(出典:資源エネルギー庁)

植物の光合成では生成物が酸素とでんぷんやブドウ糖などですが、人工光合成ではエネルギー変換効率は高いもののギ酸や一酸化炭素など単純な物質であり、将来的にはオレフィンなど基幹化学品を目指すとしています。

現在、経済産業省/資源エネルギー庁が主導するグループと環境省が主導するグループがありますが、人工光合成でオレフィンなど複雑な有機物を生成するためには、植物が行っている反応工程を分割し、水を酸素と水素に分解した後に水素とC2を反応させて有機物を合成する方向で進んでいますので、水素と酸素を分離する膜技術や触媒技術も必要となりますが、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などが主体になり付帯技術の研究開発も進められています。

その他多くの大学や産業技術総合研究所などで人工光合成の研究開発が進められており、近い将来フィールドにおける実証プラントの建設も計画されているようで、豊田中研では2030年の実用化を目指すとしています。

カーボンニュートラルに向けて、水とCO2を原料として太陽光をエネルギーとして有機物を生成する人工光合成技術は日本が世界トップレベルにある有望技術と言えますので、今後水素の生成/貯蔵技術としても期待されるものと思われます。

5. まとめ

(1)人間が鉄や蒸気機関を用いて産業の急速な発展を行った産業革命以前、人間を含む動物の呼吸や生活行動、山火事や火山の噴火などの自然現象によって排出されるCO2の総量より、地上と海中に繁殖している植物 や藻類などが光合成によって固定するCO2の量の方が多かったため、自然のカーボンリサイクルがバランスしていた。
(2)産業革命以降になると、人々の生活が徐々に豊かになり、人口が増え、石炭や石油などがエネルギーとして大量に消費されるようになってきた。さらに、CO2を吸収する森林が開発のために伐採され、やがて排出されるCO2量が植物や藻類が吸収する量を越えて自然のカーボンバランスが崩れる結果に至っている。
(3)この結果、CO2による温室効果の影響で、地球上の気温や海水温が上昇した結果、世界中で異常気象が頻発しており、今後はさらに増悪されることが予想される。
(4)これを防ぐためには、CO2の排出を抑制するとともに排出されたCO2を人工的にカーボンリサイクルする必要がある。
(5)今回は、植物や藻類が行っている光合成、即ち「水とCO2を原料に、太陽光をエネルギーとして有価物質を産み出す手法」である人工光合成の開発について現状を調べた。
(6)我が国はこの人工光合成の研究開発はトップレベルにあり、実用化に必要な最低限のエネルギー効率もクリア目前であり、2030年までには実用化の可能性が見えてきている。

引用・参考資料

  • CO2を“化学品”に変える脱炭素化技術「人工光合成」 (資源エネルギー庁、2018年7月5日)
  • 未来ではCO2が役に立つ?!「カーボンリサイクル」でCO2を資源に (資源エネルギー庁、2019年9月20日)
  • 太陽とCO2で化学品をつくる「人工光合成」、今どこまで進んでる? (資源エネルギー庁、2021年3月4日)
  • 地球温暖化の原因であるCO2をエネルギー資源へと変換! GSアライアンスが有機物を生成する人工光合成に成功 (@Press/GSアライアンス株式会社、2020年11月17日)
  • 人工光合成効率、世界最高の7.2%豊田中研、ギ酸で達成 (Web版日本経済新聞、2021年4月26日)
  • 水素を貯蔵できるギ酸から水素を生成するメカニズムを解明--白金微粒子の触媒機構が明らかに 大阪市立大学 (fabcross/MEITEC)
  • ギ酸の力で水素エネルギーを有効利用 (科学技術振興機構、JSTニュース、2019年4月号)
  • (ぶらっとラボ)CO2燃料電池、実用へ一歩 (朝日新聞デジタル、2021年4月19日)
  • CO2を燃料電池材料に 新技術を開発、金沢大など (朝日新聞デジタル、2021年3月17日)
  • 常温環境下において世界最高スピードでCO2を価値ある資源に変換可能なCO2資源化技術を開発 (東芝、2021年3月22日)
  • CO2から化学品原料への変換を世界最高レベルで達成―工場などから排出されるCO2を削減し、パリ協定の目標達成に向けた社会課題解決に貢献 (東芝、研究開発センター、2019年3月15日)
  • 多量二酸化炭素排出施設における人工光合成技術を用いた地域適合型二酸化炭素資源化モデルの構築実証 (環境省/東芝、2019年3月5日)
  • 人工光合成ではない「P2C」でCO2からCOを生成、東芝が工業化にめど (MONOlist・東芝、2021年3月22日)
  • CO2を原料に太陽光で発電、藻類で作る「バイオ燃料電池」を開発 (スマートジャパン/大阪市立大学、2018年5月10日)
  • カーボンニュートラルの基礎知識 (日本自動車工業会)
  • 森林の二酸化炭素吸収力 (関東森林管理局)
  • 今後のエネルギー問題を考える #3~人工光合成とは、そして可能性は~ (日本バルブ工業会2013年8月26日)

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